「…っ…はは!分かった。分かったよ。やめろって…くすぐったい…!」子犬の首元に光るプレートに気がつき、マジマジと見つめた。
「ふーん?住所書いてあんだな」
プレートと子犬を見比べる。
「よし。届けてやるよ」
子犬の頭を撫でながら、ラグフォードは微笑んだ。
大きな屋敷が並ぶいわゆる高級住宅街を子犬を抱えたラグフォードはうろついていた。
「五丁目三の五……三の……五……あーっと、ここ、か?」
子犬の首輪のプレートと家を見比べながら呟く。
「玄関は…ここだな」
インターフォンを押すと中から応答があった。
「はい、どちら様でしょうか?」
「お宅の子犬を届けに来たんですが」
防犯カメラに向けて子犬を掲げると、少しの間をおいて答えが返ってきた……。
「……少々お待ちください」
しばらく待っていると、門が開いた。
くぐれという事か?
子犬を抱えたまま玄関までたどり着くと一人の執事が待っていた。
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
待っていたっていうなら、引き取りに来いよ。と思わなくもないが……。
「あー。いや、悪いんだけどな。こいつ引き取ってくれりゃいいんだ」
子犬を執事に渡そうとするが。
「すみません。主人にお会いし、直接お渡し願えますか?」
断られた……。
渋々屋敷の中に入ると、広間に通され子犬と共に待たされた。
コンコンと扉をノックする音が聞こえ、開いた扉から体格の良い女性と、後からアタッシュケースを持った男性が入って来た。
「この度は、わたくしの可愛い可愛い、アントワネットちゃんを届けて下さって感謝いたしますわ!」
ホホホ、と口元を押さえながら笑う女性にラグフォードは若干引き気味となるが、子犬は飼い主に会えたからか、嬉しそうに吠える。
後ろに控える男性が持っていたアタッシュケースをテーブルに置き開く。
「ほんの気持ちですわ」
再びホホホ、と笑う女性を放置し、アタッシュケースに視線を向けるとそこにはケース一杯の札束……
ラグフォードがため息を吐き、「興味ねぇ」と言うと女性は驚きのあまり叫んだ。
「なっ!では、何が望みです!?」
「いや、全く何も要らねぇ」
「では、貴方は善意で行なったと?」
「あー。ま、そうなるだろうな」(というより、たまたまこうなったんだしな)
「ホホホ。何が目的なの?」
あくまでも、ラグフォードが何かを企んでいると思っているのか、恰幅の良い女性は言い募る。