「なんだ、あれ?」
ローゼンティスにお使いを頼まれた……というより、「卵と牛乳が切れたので、買ってきてください」と言われ、強制的に行く事となったラグフォードは首を傾げていた。
何故ならば、脇目もふらず走る男達がいたからだ。
不思議そうに見ていると、男達が追いかけている対象が分かった。
「何やってんだ?あいつら……つーか子犬かよ」
子犬を追いかけ回して何が楽しいんだか……
その場を通り過ぎようとしたラグフォードだが。
ふ、と子犬に視線を向けた。
明らかに楽しそうな状況ではない。
ラグフォードはため息を吐くと男達に近づいていった。
「くそっ!大人しくしろ!」
「おい!傷つけんなよ?せっかくの血統書が売れなくなるぞ!」
数人の男達が子犬を追いかけながら、怒鳴りあっている。
必死で子犬を捕まえようとする男達、逃げ惑う子犬……はたから見ればかなり笑える光景である。
必死な雰囲気の男達に声が掛けられた。
「お前ら何やってる?」
男達がそちらを見ると、金の髪に青い瞳の青年が佇んでいた。
「お前には関係ない。小僧は大人しく消えろ」
男の一人がそう吐き捨てると、ラグフォードの眉がぴくりと動く。
「小僧、だと?俺の四分の一も生きてねぇ、ガキ共に言われたくないな」
ラグフォードは青い瞳を細め、睨みつける。
「生意気な小僧だ」
彼らにはラグフォードの言葉が理解出来ない。
何を言っているんだ?というような表情の後、憐れみや侮蔑を込めて嘲笑う。
それもそうだろう。
彼らはラグフォードがヴァンパイアだと知らないのだから。
一人の男が懐から拳銃を取り出し、ラグフォードへと向けた。
「俺に人間の玩具なんて意味ねぇよ」
拳銃を一瞥しつつラグフォードはうっすらと笑みを浮かべた。
数人の男達が白目を剥いて地面に転がる。
ラグフォードに拳銃を向けた男は勿論のこと、仲間の男達も完全に意識を失っている。
純血のヴァンパイアであるラグフォードには銀の弾はもちろん、陽の光や聖水すら効かない。
当然、拳銃も意味をなさない。
「あー。大人気ない……俺」
ラグフォードは髪をグシャグシャにしながら、軽い自己嫌悪に陥る。
「ん?なんだ、お前」
のんびりと、その場にそぐわない雰囲気でラグフォードは足にまとわりつく子犬に視線を向けた。
パタパタと尻尾を振る子犬を抱き上げると、ラグフォードに鼻先を押し付け、ペロペロと顔を舐める。