がっくりと項垂れるラグフォードを花見のメンバー内に慰める者はおらず、代わりにざっくりと突き刺さる言の葉が放たれる。
「……どんな役割だよ」
「和ませ役ですよ。きっと」
「それ、ぜってー違うだろ」
にっこりと満面の笑みで答えたローゼンティスにラグフォードは半眼になる。
「せっかく気を利かせたのに間抜けですねぇ」
「んな!?間抜けとは何だ間抜けとは」
「愚かだから間抜けと言ったまでです。他意はありません」
「思いっきりあるだろ!」
叫ぶラグフォードを軽く無視し、ローゼンティスはお茶を口に含む。
「お花見には日本茶が合いますね」
などと呑気な事を言いつつ桜の巨木を眺めるローゼンティスの湯飲みに散っていく桜の花びらがゆらりと浮かぶ。
「こういうのを風流と言うんですかねぇ」
「おーまーえーなぁー」
「ほら、ラグも食べなさい。せっかく用意してくれたのに失礼ですよ」
ひょいっと皿に乗った団子を一本取るとラグフォードの口に突っ込む。
「ん?うまいな」
ラグフォードは、ムグムグと団子を頬張り、お茶を飲み干す。
「次の質問をよろしいでしょうか?」
パラリと台本のページを捲り冬馬が和む二人に声を掛ける。
「ええ。構いませんが……その前に一つ質問があります」
「私にでしょうか?」
「そうですよ」
「承りましょう」
「貴方には好きな方はいないんですか?」
台本を閉じ先を促す冬馬にローゼンティスはにっこりと微笑む。
「私に好きな人は……」
いない。と答えようとしたが、芙蓉によって遮られた。
「冬馬の好きな人?私も興味あるね。誰だい?」
「おりません」
否定を露にする冬馬だが、芙蓉は聞いていないのか軽く受け流す。
「そういえば君からその類いの話を聞いたことがなかったね」
「……」
沈黙する冬馬。
お話しないのではなく、お話したくないのです。
一言でも伝えようものなら目を爛々と輝かせ恋の指導なるものを延々と聞かされる事は目に見えておりますから………。
さて、どうしたものか。
冬馬は心の中で嘆息する。
沈黙する冬馬にローゼンティス達も黙して待っていたが、しびれを切らしたラグフォードが口を開く。
「もう、いいんじゃねぇ?無理に聞く事ねぇーだろ」
一見、冬馬を気遣ったかのような発言だが、ラグフォードの表情には『面倒くさい』の一言が書かれている。
「そうですねぇ。では、質問を続けていただけますか?」