本日は私、草壁冬馬(くさかべとうま)のお話をさせていただきたいと思います。
朝、いつものように屋敷にいる誰よりも早く起き、朝食の支度の為に、台所へと向います。
料理などの家事全般は私が受け持たせていただいております。
私は常々、食事の量は三人分だけで良いと思うのです。
主である芙蓉様、柚葉様、瀬菜のみでも良いと思うのです。
残りの二人はその辺の雑草でも食べていればいい。
しかし、そういう訳にもいきません。
そんな事をすれば、柚葉様がお悲しみになってしまいますから……それは私の意思に反しますし、そして何よりも、芙蓉様から氷のような視線を頂く可能性があるからです。
あの方は柚葉様に関してのみ冷静さをかかれますから。
そんな私の一日は怒号から始まります。
「こらー!傑!ウチのプリン食べたやろ!!食べんなて、何度言えばわかんねん!」
怒鳴る彼女の名は松尾雛菊(まつおひなぎく)。
この屋敷に住まう者の一人です。
まだ、パジャマ姿の彼女は、バタバタと廊下を走り…全く朝から騒々しい方ですね。
しかも、未だパジャマ姿とは……常識から脱線していますね。
「ああ!?知らねーよ!確かにこの間は俺が食ったけどな。今回は知らねー!いっつもいっつも俺のせいにしてんじゃねぇ!!」
この間?貴方は毎回同じ事をしているのですか?
ガキですね。いえ、ガキ以下です。
だから、阿呆だと思われるのです。
扉から凄い勢いで出てきたのは焔傑(ほむらすぐる)と申しまして、彼もまたこの屋敷の住人でございます。
彼はトレーニングでもしていたのか、汗臭い……
「日頃の行いやろ!アンタが疑われるのは当たり前や!さあ、早(はよ)う吐き!」
完全に傑だと思われていますね。
まぁ、日頃が日頃なので自業自得でしょう。
そんな事より私が気になるのは………パジャマ姿です!
「雛菊…」
注意を促そうとした私の耳に笑い声とぼんやりとした声が聞こえます。
「本当に雛菊は朝から元気ですわね」
クスクスと笑っているのは村戸瀬菜(むらとせな)……貴女も笑っている場合ではありませんよ。
彼女は雛菊のようなパジャマ姿ではなく、きちんと服を着て身なりを整えています。
「んー?雛ちゃんは何怒ってんのー?」
寝ぼけ眼(まなこ)を擦りながらぼんやりした様子でお聞きになるお方は柚葉様。
この方は、芙蓉様の大切な方であり、我々にとってもなくてはならないお方です。